Nikon Sは程度のそこそこの物だとボディで約50000円~となる。しかし先日某中古店にシャッター幕が汚く補修されベコベコな一品がレンズ付き39800円であった。危ない橋と理解しながらも本体しか買えない金額でレンズ付なので購入した。とりあえず動作は良好、シャッター速度の精度は?だが、ちゃんと全速で動作した。とりあえず写るかなと思ったが、世の中そんなに甘くない。まともに写らないのだ、高いオブジェになるのか、安物買いの銭失いになるのか?
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【参考】
注:この補修はメーカ推奨の補修ではないので参考にする際は自己責任でお願いします。万一カメラを壊した、大切な写真が失敗したということになっても一切責任は取れないのでお約束の自己責任でお願いいたします。
取り外したシャッター幕、とにかくひどい。もちろんそれを承知で買ったのだが、冷静に考えればこれでまともに写る訳はない。
まず試写してみるとフィルムをチャージして長時間放置するとこのように光線漏れ。作品集にはチャージ直後の光線漏れしていない写真を使用したが、これじゃ撮影しても楽しくない。蛇腹補修にも使っている乾燥しても柔軟性の残る塗料「ソフト99チョット塗りペイント 皮革用ブラック 」で補修と考えた。しかしレンズを外し光線を当ててみると想像以上にシャッター幕がボロくてかなり塗料を塗る羽目になった。しかしその甲斐あって光線漏れがなくなり早速二度目の試写に出かける。
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自動車のタッチアップペンの様な製品だが、塗膜が厚く弾力性があるのでシャッター幕や蛇腹のピンホール補修に重宝する。
撮影してみると何枚かに一枚こんな線が入った写真が出来上がってきた。光線漏れが直っていない?しかしよく見ると反対側だ、カメラを動作させながら検証すると塗料を塗りすぎたシャッター幕が硬くなって時々引っかかっていたのだ。これはシャッター幕の引っ掛かりによる露光ムラだ。もうこのシャッター幕で逃げ切ることは不可能そうだ、この個体を使うならシャッター幕交換が必須になる。
そこで自分で直してみようと思った。しかしシャッターユニットを完全に分解し幕を交換、さらに組みつけてシャッター速度を調整とか少しハードルが高い。しかしこんな適当なシャッター幕でも一応動作していたのだから露光に関係のある部分だけを交換しようという結論になった。フィルムの通るレール部分を外すとシャッターユニットが見えるのでその範囲で交換ができる。
しかし作業中は作業に精一杯だったので写真は撮影していない。ヒントになりそうなことだけ以下に解説する。
本来純正部品なら袋状になったシャッター幕の端に赤矢印部分の金具が通っている。しかし作業簡略化の為古い幕を剥離した金具にゴム系ボンドで貼るだけとした。裏側も抵抗が変わるといけない思ったので金具と同じ幅(2~3mm?)のシャッター幕を切り出しやはりゴム系ボンドで貼っている。
またシャッター幕は右端から53mm部分までを交換、古い幕も右端部分から53mmのところでカットする。ちなみに幅は29.5mmとした。53mmの場所というとドラム部分に接着されている場所になる。この工法だとドラムにもオリジナルの様にぐるっとシャッター幕を巻かずゴムボンドでドラムとシャッタ幕が接着されるのは10mm程度になる。
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シャッター幕は今回「ジャパンホビーツールのシャッター幕 」を使用した。当時各メーカが使用していた布製シャッター幕とほぼ同等の製品で分解する人ならほとんどの人が使っているであろう一品だ。
またシャッター幕を右端から53mmのところでカットするときの注意点だが、幕を切ってしまうとスプリングの力で左側のドラムが回ってしまう。そこで黄色い矢印の部分に詰め物(私の場合はマスキングテープを丸めた物を使用した)をしてドラムが回らないように注意する。しかしあまり無理に詰め込み取れなくなったり壊したりしてはだめなのでそこそこに。
シャッター幕は右端をきっちり位置決めして接着、その後ドラム側をカットしたところを目安にゴム系接着剤で張ってあげればよい。接着剤が乾燥したら動作試験をしてみよう。幸い私の個体は順調に動作し始めた。
また私の場合作業中にボロくなっていたシャッターリボン(赤矢印部分)が切れてしまった。これも交換には分解が必要なので余ったシャッター幕をカットして上下挟む様にゴム系接着剤で貼って補修した。
接着剤が乾燥してから動作試験を実施、正常に動作しているようならフィルムレールを装着しよう。実際邪道な補修なので耐久性は保証できないが、現在50回位シャッターを切った感じでは接着部分の外れもなく大丈夫そうだ。シャッターユニット分解はハードル高いがこの程度なら少しカメラを分解した人なら大丈夫だと思う。
コレクタークラスになるとピンホール程度の補修でもシャッター速度に影響するから購入は控えるべきだという人もいる。しかしネガで遊ぶ程度ならこの程度の補修でいいだろう、但しちゃんと写れば。ということでネガを入れ早速試写をしてみる。
とにかく分解というほどでもなく、黄矢印の4本のネジを外すだけなのでお手軽。
シャッター速度を変化させながら絞りも変化させ適正露出で撮影した写真。三枚とも明るさに変化がないのでシャッタースピードの大きな狂いやバラつきは無さそうだ。左側がケラレている様に見えるが、そういう場所で撮影したのでカメラの異常ではない。他26枚、1秒から1/500まで使用して色々撮影してみたが、ケラレや露出のばらつきは無かった。またチャージ後長時間蛍光灯にレンズを向けその後撮影した写真にも光線漏れの跡はなかった。どうやら直ったっぽい。
先程の写真、三枚のうちの一枚。フィルムスキャナではなくフラットベッドスキャナでスキャンしたので若干ピンは甘いが、スカートに合わせたピンはきっちり来ているので問題は無さそうだ。また露光窓から見えるシャッター幕がきれいなのは見ていて気分がいい。
シャッター幕がダメで危うくドール撮影用の小物に成り下がるところだったNikon Sだが、これで撮影機材としてまた使える。またこれを機会に来るべき日に備え「クラシックニコン完全分解修理手帖--REPAIR MANUAL S/SP/F/F2 」を注文しようと思ったが、高すぎる。色々探したらオンデマンド印刷で品質は一段落ちるようだが、こんな復刻版もある。私は復刻版を注文したが、オリジナルとどちらを選ぶかは人それぞれだろう。
【参考】
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注:この補修はメーカ推奨の補修ではないので参考にする際は自己責任でお願いします。万一カメラを壊した、大切な写真が失敗したということになっても一切責任は取れないのでお約束の自己責任でお願いいたします。
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